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  テーマ 97 管理職者として新しい現実を生み出す手順
      〜センスメイキング理論から学ぶ管理職者の実務〜

  

■センスメイキング理論とは

早稲田大学教授 入山 章栄氏著
『世界標準の経営理論』ダイヤモンド社より抜粋

・ハンガリー軍偵察部隊の遭難脱出

ハンガリー軍偵察部隊はアルプス山脈の雪山で
猛吹雪に見舞われ遭難した。

彼らは吹雪の中でできることはなく、
テントの中で死の恐怖に直面していた。

その時、偶然ある隊員がポケットから地図を見つけた。
隊員たちは「この地図があれば帰れる」と、

落ち着きを取り戻し下山を決意した。
彼らは猛吹雪の中テントを飛び出し、

地図を頼りに大まかな方向を見極めながら進んだ。
そして何とか無事に下山することに成功した。

ただ、下山した隊員が持っていた地図を確認した上官は驚いた。
なぜなら彼らが頼りにしていた地図は、

アルプス山脈の地図ではなく、
ピレネー山脈の地図だったからだ。

センスメイキング理論は、
「何故、ハンガリー軍偵察部隊の遭難脱出」

のようなことが起こるのかを、科学的に説明した理論です。

センスメイキング理論は、アメリカ、ミシガン大学の
世界的な組織心理学者カール・ワイク氏が
1995年に論文発表したものです。

センスメイキング理論は、

「組織のメンバーや周囲の利害関係者に対し、
現状の捉え方と今後の対応を納得してもらい、
行動してもらうためのプロセスを説明する理論」。

「納得」、「腹落ち」の理論と訳されております。

センスメイキング理論は、

「変化の激しい、先行き不透明な環境で、
企業がどのように意思決定し、
新しいものを生み出していくとよいのか」

に対し、多くの示唆を与える理論といわれ、
現在の日本において、イノベーションを起こしていくために
重要な理論とも言われております。

実務的には、センスメイキング理論は、
日頃、管理職者の方が担当部署内で行っております

「自社を取り巻く現状とその捉え方を部下の方に説明し、
今後の対応について、目標を掲げ、その目標を説明し、

納得してもらい、行動してもらう」という、
この一連のプロセスが何故必要なのかを
科学的に説明した理論ともいえます。

■まず行動し環境を変えていくことが理論的にも重要
 センスメイキング理論のプロセス  

センスメイキング理論が掲げるプロセスは、
下記のようなことになります。

1.プロセス1.現状を把握する(環境の認知)

今、自分の担当部署や会社を取り巻く業界の状況や
ライバル企業の状況などの環境の変化、

自分の担当部署や会社の強みは
このまま活用できるのかなどを把握します。

2.プロセス2.ベクトルを合わせる(解釈を揃える) 

自分の所属部署や会社を取り巻く環境をどう解釈するかは、
人によってさまざまで、いろいろな意見を持ちます。

このような中で、管理職者としては、
部下の方や上司の方など会社内の人によって

異なるさまざまな解釈の仕方や意見の違いを集約し、
一つの方向性を示し、目標を明確に設定し、部下に話し、

説得し、賛同させ行動してもらうことが必要となります。

3.プロセス3.行動し環境を変えていく
(イナクトメント:行動をもって環境に働きかけること)

実際に行ってみると当初予想もしていなかった
いろいろなことが起きます。

センスメイキング理論では、
不確実性の高い事業環境下で重要なことは

「まずは行動」することといっています。

いろいろな解釈の仕方や意見がある中では、
「何となくの方向性」でまず行動を起こし、

環境に働きかけることで、
新しい情報を感知し得ることが重要となります。

そして新たに得られた情報を基にそれに関する
解釈の仕方や意見をさらに揃えていきます。

行動して試行錯誤を重ねていく間に、
やがて納得できる道筋ができてきます。

そしてその道筋に納得してもらいながら、
さらに前進していくことが必要となります。

■新しい現実を生み出すのが管理職者の仕事
 センスメイキング理論が示していること

「大まかな意思・方向性を持ち、それを信じて進むことで、
客観的に見れば起きえないことを起こす力が人にはある」

というのが、センスメイキング理論が示していることであります。

管理職者の方は、部下の方に対して、
未来へのストーリーを語り、足並みを揃え、

まずは行動し、環境に働きかけ、
新しい現実をつくっていくことが仕事となります。

これは、精神論や単なる想いとかではなく、
管理職者として行わなければならない仕事です。